「グランドセイコー(GS)が欲しいけれど、あの美しい鏡面はすぐに傷ついてしまうのではないか?」
「維持費が高そうで、買ってから後悔したくない」
そんな不安を抱えていませんか?
結論から申し上げますと、グランドセイコーの「ザラツ研磨」による鏡面仕上げは、一般的な時計よりも傷が目立ちやすい側面があります。美しすぎるがゆえの宿命です。
しかし、絶望する必要はありません。GSには「新品同様に蘇らせる」ための充実したメンテナンスプログラムが用意されています。
この記事では、正規販売店でもなかなか語られない「傷のリアル」と、実際に修理に出した場合の「費用と期間」、そして購入前に知っておくべき「5年間の維持費」について、包み隠さず解説します。
グランドセイコーの「ザラツ研磨」は傷つきやすいのか?

鏡面が美しすぎるがゆえの「代償」
グランドセイコーの最大の特徴である「ザラツ研磨」。歪みのない鏡面は、光を反射して宝石のように輝きます。しかし、その歪みのなさは、わずかな小傷(スクラッチ)さえも敏感に映し出してしまうことを意味します。
ヘアライン仕上げ(筋目)の時計なら気にならないような薄い線傷でも、GSの鏡面部分では「完璧な鏡」に入ったヒビのように目立ってしまうのです。
日常生活でつく傷のレベル
普通に生活しているだけでも、以下のようなシーンで「いつの間にか」傷は増えていきます。
デスクワーク: パソコンのパームレストとバックルが擦れる(バックルの小傷)
ドアノブ: 通り抜けざまに時計の側面を軽くぶつける(ケースサイドの打痕)
着替え: ジャケットのファスナーやボタンと接触する
これらは避けようがありません。「使えば傷つくもの」と割り切る心構えが最初に必要です。
素材による違い:ステンレス vs ブライトチタン
傷を少しでも減らしたい場合は、「ブライトチタン」モデルを検討することをおすすめします。
GSのブライトチタンはステンレススチールよりも硬度が高く、擦り傷に強い特性があります。一方で、チタンであっても強い衝撃による「打痕(凹み)」は防げませんし、ステンレス特有の重厚な輝き(白さ)とは色味が異なる点には注意が必要です。
【実体験】傷だらけのGSを修理に出してみた(費用と期間)

では、傷ついてしまったGSはどうすればいいのでしょうか?
メーカー(セイコータイムラボ)には、傷を修復するための2つのメニューがあります。
1. 「ライトポリッシュ」と「外装リペアポリッシュ」の違い
| メニュー | 内容 | 対象の傷 | 費用 |
|---|---|---|---|
| ライトポリッシュ | 表面を軽く整え、艶を出す軽研磨 | 浅い擦り傷、くすみ | オーバーホール料金に含む(※単体受付不可) |
| 外装リペアポリッシュ | 熟練職人がフォルムを整え直す本格研磨 | 深い傷、目立つ打痕 | 別途有料 |
多くの人は3〜5年に一度のオーバーホール(分解掃除)のタイミングで「ライトポリッシュ」を受けます。これにより、日常使いの小傷は綺麗になります。
しかし、「ガツン」とぶつけてしまった深い凹み(打痕)はライトポリッシュでは消えません。ここで登場するのが「外装リペアポリッシュ」です。
実際の見積もり例(コンプリートサービス利用時)
| 項目 | 概算費用(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| コンプリートサービス | 約 77,000円 | オーバーホール + ライトポリッシュ |
| オプション:外装リペアポリッシュ | + 約 46,000円 | ケース(本体)のみの研磨の場合 |
| 合計 | 約 123,000円 | 期間:約 1〜1.5ヶ月 |
※価格は2025年時点の目安です。モデルや状態により変動します。
これを「高い」と感じるか、「新品を買い直すよりはるかに安い」と感じるかが、GSオーナーの分かれ道です。
筆者の感想としては、戻ってきた時計を見た瞬間、「えっ、これ新品交換された?」と疑うほどの輝きを取り戻しており、12万円の価値は十分にあると感じました。
グランドセイコーを一生使い続けるための「維持費」シミュレーション

購入後に「維持費が払えない!」と後悔しないよう、10年間にかかるランニングコストを試算しておきましょう。
クオーツ(9F)の場合:最も維持費が安い
クオーツモデルは機械的な部品点数が少なく、維持費は非常に優秀です。
電池交換: 約 8,800円(2〜3年に1回)
コンプリートサービス: 約 58,300円(7〜8年に1回推奨)
10年間の目安: 約 8〜9万円
機械式・スプリングドライブの場合
複雑な機構を持つため、定期的なケアが必須です。
コンプリートサービス: 約 79,200円(3〜4年に1回推奨)
10年間の目安: 約 15〜23万円(2〜3回実施)
「ロレックス」や「オメガ」のクロノグラフモデル等のオーバーホール料金(10万円〜)と比較すると、GSの維持費は「高級時計としては標準的〜やや良心的」な部類に入ります。特に、ライトポリッシュが基本料金に含まれている点はお得です。
それでも「後悔」しないために知っておくべきこと
1. 「傷も味になる」は間違い?
ヴィンテージのミリタリーウォッチなら傷も「味」になりますが、グランドセイコーの美学は「光と陰」のコントラストにあります。傷だらけで曇ったGSは、魅力が半減してしまいます。
「ボロボロになるまで使い倒す」よりも、「大切に使い、定期的に磨き直してリセットする」というサイクルを楽しむ時計です。
2. 公式の部品保有期間を超える長期サポート体制
多くのブランドが生産終了後10年程度で部品保有を打ち切る中、グランドセイコーは公式に「生産終了後の部品保有期間10年を超えて、さらに長期間の修理ができる体制」を整えていると明言しています。実際には、製造中止後30年分程度の部品をあらかじめストックしているとも言われており、異例の長期サポートが期待できます。
「傷ついても、壊れても、直せる」。この安心感こそが、維持費以上の価値です。
3. 傷が怖い人へのおすすめ
どうしても傷が気になる方は、以下のモデルを検討してください。
セラミックス採用モデル: スプリングドライブのスポーツコレクションなど。極めて硬く、ほぼ傷がつきません。
ベゼルレスのデザイン: 傷が一番目立つのは「ベゼル(ガラスの周りの縁)」です。ベゼルのない、または細いデザイン(SBGX261など)は比較的傷が目立ちにくいです。
まとめ

グランドセイコーは確かに傷がつきやすい(目立ちやすい)時計です。しかし、それは他にはない「美しさ」の裏返しでもあります。
日常の小傷: 3〜4年ごとのオーバーホール(コンプリートサービス)の「ライトポリッシュ」で綺麗になる。
深い傷: お金をかければ「外装リペアポリッシュ」で新品同様に戻せる。
維持費: 10年で数万円(クオーツ)〜20万円弱(機械式)。これを月額換算すれば、決して高い出費ではありません。
「傷つくことを恐れて着けない」のが一番の損失です。
人生の時間を刻むパートナーとして、傷さえも愛し、時にはプロの手で癒やしてあげながら、永く付き合っていってください。
よくある質問 (FAQ)
ザラツ研磨は何回までできますか?
研磨は金属を薄く削る作業です。通常5〜6回程度が限界と言われていますが、メーカー修理ではケースの痩せ(変形)を最小限に抑えるよう配慮されています。一生のうちで使い切る心配はほぼありません。
街の時計屋さんで研磨してもいいですか?
絶対にNGです。 ザラツ研磨は特殊な技術と設備が必要です。一般的な研磨では、GS特有のエッジ(稜線)が丸まってしまい、取り返しのつかないことになります。必ずセイコー正規のサービスセンターに依頼してください。