こんにちは。ハラダの藤本です。気がつけば桜のシーズンも終わりに差しかかり、街路樹は早くも新緑の色を帯びはじめました。一年で最も華やかな景色が静かに過ぎていく寂しさと、これから来る初夏への期待――その二つが同居する、なんとも惜しい時季ではないでしょうか。
オンラインからのお問い合わせや店頭スタッフからの報告でも、この時期はグランドセイコーの「桜モデル」へのご関心が、不思議と途切れずに続いてまいります。なかでも、判で押したように同じお名前を伺うのが――花筏、SBGA443です。
ただ、その点について、正直にお伝えしておきたいことがあります。

桜のたびに、毎年お名前を伺うモデル――花筏(SBGA443)と需給のいま
SBGA443――愛称『花筏』。淡いピンクのダイヤルに、川面に流れる花びらの情景を型打ちで落とし込んだ、グランドセイコーらしい春の名作です。
その人気の高さは、店頭スタッフから日々の様子を伺っていてもよく分かります。お客様のほうから「桜の時計といえば」と先にお名前を出してくださるほどに、すでに春のグランドセイコーの代名詞として定着しているモデルです。
ただ、率直に申し上げますと――ご好評につき、入荷待ちの状態が続いているのが現状です。お問い合わせをいただいてその場でお手元にお届けできることは、年間を通じても限られております。
それでも、諦めてしまわれる前にひとつだけお伝えさせてください。ご予約という形であれば、ご購入のお手続きを進めていただけます。入荷が回ってきた段階で、ご予約順にお声がけをさせていただいておりますので、「いつかは花筏を」とお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせくださいませ。
そのうえで、今日この記事でお伝えしたいのは、花筏ではないもう一つの桜――同じく桜をモチーフにしながら、別の表情で春の余韻を腕元に運び、そして夏になっても着け続けたくなる、そんなモデルのことです。
桜の名残を腕に、初夏へと歩いていく――SBGH341『桜隠し』

ご紹介したいのは、SBGH341です。グランドセイコーが2024年春に発表した、62GSデザインの系譜を引くハイビートメカニカル。愛称は『桜隠し』――聞き慣れない言葉かもしれません。私自身、最初に資料でこの名を目にしたときは、思わず「桜を隠す、とは?」と辞書を引き直したほどでした。
『桜隠し』とは、桜が咲いた頃に降る、季節外れの雪のことを指す日本語です。咲いたばかりの花びらの上に、ふわりと雪が積もる――その情景が、この時計の文字盤には込められています。
花筏が「散った花びらが川を流れていく光景」を描いたモデルだとすれば、SBGH341は「咲き初めた花を、雪が静かに包み込む情景」を描いたモデルです。同じ桜でありながら、語られる物語はまったく違います。
そして、何より私がお伝えしたいのは――桜モチーフだからといって、桜の時期だけのものにしてしまうのは、もったいないということです。日本の四季を腕元に留めるという発想に立てば、桜は一年を通して身につけていてよいモチーフです。むしろ、桜の盛りが過ぎてゆくこの時季こそ、腕の中に桜を住まわせておきたくなる――SBGH341には、そう思わせるだけの懐の深さがあると感じています。
『桜隠し』というダイヤルが描く、雪と花びらの情景

文字盤のお話に、もう少し踏み込ませてください。
SBGH341のダイヤルは、グレイッシュで柔らかいピンクを基調として、ランダムで有機的な型打ちパターンが施されています。グランドセイコーの春のモデルというと、規則的な雪白パターンや雪化粧が思い浮かびますが、この『桜隠し』はあえて規則性を持たせていません。
なぜ、ランダムなのか。
「咲き初めの桜の花びらを、雪が降って覆い隠す」というモチーフを再現するうえで、雪の降り方は規則的ではあり得ません。風に流され、枝に積もり、花びらの上にふわりと舞い落ちる――その不規則性こそが情景の本質です。
ダイヤルに目を近づけると、型打ちの凹凸が光の角度によって表情を変えていきます。ある角度では雪の積もりに見え、別の角度では花びらのきらめきに見える。一つの文字盤の中に、雪と花びらの両方が同時に存在しているかのような、不思議な奥行きが生まれているのです。

この写真は、満開の桜の下で撮影したものです。ファインダーを覗きながら、不思議な感覚に陥りました。腕元のダイヤルと頭上の桜が、同じ色温度で響き合っている。意図せずそうなる――というより、この時計はそうなるように設計されているのだと、現場で実感した瞬間でした。
このピンクは、不思議と季節を選びません。グレイッシュに落ち着いた色味は、桜が散ったあとの新緑にも、初夏の白いシャツにも、夏の日焼けした肌にも、そっと寄り添ってくれます。桜の盛りに着ければ景色と響き、季節が進んでも腕元に春の余韻を残してくれる――そんな振れ幅の広さが、このダイヤルの懐の深さなのだと感じました。
ベゼルがないボックス型サファイアの構造も、この情景を妨げません。ガラスの縁が文字盤に被さらず、ダイヤルそのものを広々と見せてくれます。眺めるたびに、桜と雪の物語にすっと引き込まれていく――そういう作りに仕上がっています。
38mm × 12.9mm × 98g――男性にも女性にも、すっと馴染む
ダイヤルの話だけで記事が一本書けてしまいそうですが、装着感のお話に進ませてください。
SBGH341のスペックを整理すると、ケース径は38.0mm(縦44.7mm)、厚さは12.9mm、ラグ幅は20mm、ブレスレット込みの重量は98g。素材はグランドセイコーが誇るブライトチタンで、ステンレスの約半分の比重ながら、見た目は鋼に勝るとも劣らない深い輝きを持っています。

数字だけを並べると、「ちょうどいいサイズ」という言葉に収束してしまいそうですが、腕に乗せてみると、その「ちょうどいい」がいかに繊細な設計の上に成り立っているかがわかります。
私の腕周りはおおよそ18cm。グランドセイコーで言えば40mm前後のモデルが普段はもっとも収まりがよいのですが、SBGH341の38mmは決して「物足りない」とは感じませんでした。むしろ、ボックス型のサファイア風防がダイヤルを大きく見せてくれる効果で、視覚的な存在感は数字以上にあります。

そして、もう一つ確かめたかったのが、女性の腕での見え方でした。当店の女性スタッフ(腕周り14cm前後)にも実際に着けてもらい、その様子を撮影させていただきました。

結果は、ご覧いただいた通りです。男性の腕にも女性の腕にも、奇をてらわずすっと馴染む――38mmという径は、現代のグランドセイコーが提示するユニセックスの一つの解答だと、私は感じました。
そして98gという軽さ。腕に乗せていることを忘れる時間が、SBGH341には確かにあります。普段から重めの時計をされている方が試着されると、店頭スタッフから「軽いですね、という第一声をいただくことが多い」と伺っております。夏に向けて袖が短くなっていく季節には、この軽さがそのまま快適さに直結してまいります。ブライトチタンというグランドセイコーの素材選択が、ここで効いてくるのです。
キャリバー9S85――毎秒10振動、ハイビートが刻む確かな時間

中身に入ってまいります。SBGH341に搭載されているのは、キャリバー9S85――グランドセイコー9Sメカニカルの中でもハイビート系列を担う、毎秒10振動(36,000振動/h)の自動巻ムーブメントです(手巻きにも対応)。
ハイビートと聞いて、何が嬉しいのか。一言で申し上げると、秒針の動きの滑らかさと、精度の確かさです。一秒を10分割して刻んでいくため、針の運びが流れるように見える。実際にダイヤルを見つめていると、グランドセイコー9Sの中でも特にこのハイビートの動きには、独特の品の良さがあると感じます。
精度は、工場出荷前の規格で+5秒〜-3秒(日差)。月差ではなく日差で語られる精度です。さらに、パワーリザーブは約55時間。金曜の夜に外して、土曜・日曜と過ごし、月曜の朝に手にしても、まだ動いている――そういう余裕を持たせた設計になっています。
加えて、ねじロック式りゅうずによる10気圧防水、耐磁性、耐メタルアレルギーまで備わっています。日常生活において、雨の日も、手洗いの場面も、これからやってくる汗ばむ季節にも、気を遣わずに着けていただけます。
数字だけを並べると、確かに地味に映るかもしれません。けれど、地味であることそのものが、グランドセイコーの矜持でもあります。派手さで人の目を引きにいくのではなく、長い時間、変わらず正確に動き続けることそのものを誇りとする。SBGH341の中にも、その精神は静かに息づいています。
姉妹モデル SBGH343「清明」――桜のあとに芽吹く、もう一つの春

ここで、もう一つご紹介させてください。
SBGH341には姉妹モデルがあります。型番はSBGH343。ケース、ムーブメント、サイズ感のすべてをSBGH341と共有しながら、ダイヤルだけがライトグリーンに変わったモデルです。
愛称は『清明(せいめい)』――二十四節気の一つで、桜が散ったあとに若葉が芽吹き始める、春から初夏への橋渡しの時期を指します。まさに、いまの季節そのものです。
SBGH341が「咲き初めの桜と雪」を描いたモデルだとすれば、SBGH343は「桜のあとに来る、新緑の生命力」を描いたモデルです。日本の春から初夏への移ろいを、二つのダイヤルで違う角度から表現する――グランドセイコーらしい、丁寧な季節への向き合い方だと感じます。
桜の余韻を腕に残したい方にはSBGH341を、これから訪れる新緑の季節と歩きたい方にはSBGH343を、それぞれご案内させていただいております。在庫状況については、店頭またはお問い合わせフォームより、お気軽にご確認いただければ幸いです。二本セットで揃えて、季節ごとに掛け替えるという楽しみ方を選ばれるお客様もいらっしゃいます。
季節を超えて、迎えるなら――ハラダでのお取り扱いについて
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。最後に、お買い求めのご案内をさせてください。
SBGH341の希望小売価格は ¥1,056,000(税込)です。 ※価格は投稿日時現在のものです。最新価格は公式サイトをご確認ください。
ハラダでは、最大100回までの無金利分割払いをご利用いただけます。月々のお支払い額からご検討いただくことで、人生に迎えるハードルが、ぐっと現実的なものに変わってまいります。また、60回以下の分割でお支払いの場合は、3年間のホディンキーウォッチケア(対物保険)を無料でお付けしております。日常使いに安心を、長い時間に余裕を、それぞれ持っていただけます。
冒頭でお伝えした通り、SBGA443『花筏』はご好評につき入荷待ちが続いておりますが、ご予約という形であればお手続きを進めていただけます。「花筏を狙っているけれど、入荷を待つあいだ、別の桜のモデルも気になる」――そんな方にも、SBGH341はお薦めしやすい時計です。
桜の季節は、毎年あっという間に過ぎていきます。けれど、腕元に桜を一つ住まわせておけば、季節が進んでも、ふと袖をめくった瞬間に、あの春の景色を思い出せる。それは、ささやかで贅沢な暮らし方ではないでしょうか。
過ぎゆく春を惜しみながら、これから来る初夏の風を腕に受ける――そんな日々の伴侶として、SBGH341は静かに応えてくれるはずです。ぜひ、店頭で実機を手に取って、ご自身の腕で確かめていただきたいと思います。お問い合わせ・ご来店予約は、いつでもお待ち申し上げております。
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藤本(編集長・腕装着時の撮影担当) 株式会社ハラダ/日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター