グランドセイコーの歴史に、新たな1ページが刻まれました。2023年、ついにファン待望の機械式クロノグラフ(ストップウォッチ機能付き時計)が登場したのです。その名は「TENTAGRAPH(テンタグラフ)」。
これまでGSのクロノグラフといえば、スプリングドライブだけでした。なぜ今、あえて機械式なのか。そして、このモデルが世界の時計業界に与えた衝撃とは。
「デイトナやスピードマスターに負けないクロノグラフを作る」──そんなGSの野心が詰まったモンスターマシン、SLGC001の全貌に迫ります。
1. 名前の由来。「TENTAGRAPH」の意味

まず、この聞き慣れない名前の由来から解説しましょう。TENTAGRAPHは、以下の4つの単語の頭文字を組み合わせた造語です。
TEN: Ten beat(10振動)
T: Three days(3日間持続)
A: Automatic(自動巻き)
GRAPH: Chronograph(クロノグラフ)
つまり、この時計の凄まじいスペックそのものを名前にしてしまったのです。特に注目すべきは、最初の2つ。「10振動」と「3日間」の両立です。
2. 毎秒10振動で3日間動く。常識破りのスタミナ
時計好きなら、この凄さがわかるはずです。「10振動(ハイビート)」は、テンプを高速で動かすため、エネルギー消費が激しくなります。さらに「クロノグラフ」は、ストップウォッチを作動させるとさらにエネルギーを使います。
通常、ハイビートのクロノグラフなんて作ったら、パワーリザーブは40時間〜50時間が限界です。しかし、テンタグラフは「72時間(3日間)」動くのです。これは、10振動のメカニカルクロノグラフとしては世界最長となる、とんでもない記録です。
金曜日に外しても、月曜日の朝にまだ動いているハイビートクロノグラフ。実用性のGSだからこそ実現できた奇跡のスペックです。
3. 革命的キャリバー「9SC5」。デュアルインパルスの恩恵

この奇跡を可能にしたのが、ベースとなっている次世代ムーブメント「9SA5(デュアルインパルス脱進機)」の技術です。エネルギー効率を劇的に高めたこの脱進機に加え、ツインバレル(ゼンマイボックスが2つ)を採用。ムーブメントの厚みを抑えつつ、効率よくパワーを供給する。
さらに、クロノグラフ機構には「垂直クラッチ」と「コラムホイール」という高級仕様を採用。ボタンを押した瞬間の「パチン」という心地よい操作感と、針飛びのないスムーズな始動を実現しています。
4. 岩手山パターンを纏う、青きフェイス
スペックだけでなく、見た目も美しいのがGS流。文字盤には、製造地である「グランドセイコースタジオ 雫石」から望む、名峰・岩手山の山肌を表現した「岩手山パターン」が施されています。
カラーは、グランドセイコーブルーと呼ばれる深い藍色。無機質なスポーツウォッチが多い中、有機的で情緒あふれる日本の絶景を腕元に閉じ込める。スイス時計には真似できない、和の心が宿っています。
5. ブライトチタンが生む、驚きの軽さ
クロノグラフの弱点は「重さ」と「分厚さ」です。しかし、テンタグラフを手にとった瞬間、その軽さに驚きます。ケースとブレスレットに、GS独自の「ブライトチタン」を採用しているからです。
ステンレスより約30%軽く、金属アレルギーも起こしにくい。しかも傷に強い。見た目は重厚な塊感があるのに、着けると空気のように馴染む。このギャップもまた、Evolution 9 Styleが追求する「装着感」の一部です。
6. まとめ:スポーツGS新時代の幕開け

テンタグラフの登場は、グランドセイコーが「ドレスウォッチだけのブランド」から、「本格的なスポーツウォッチでも世界一を獲れるブランド」へと進化したことを宣言する狼煙(のろし)でした。
価格は約198万円(税込)と高額ですが、デイトナやロイヤルオーク・クロノグラフと比較しても、スペック面では全く引けを取りません。むしろ、精度や持続時間では勝っています。
「人と被らない、最高のクロノグラフが欲しい」──そんな天邪鬼で、本質を知る大人のための、究極の選択肢。それがテンタグラフです。