9S64とは|日差+5〜-3秒・約72時間の手巻キャリバーと搭載モデル

2026.02.28 2026.08.06 約8分 コラム

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グランドセイコー SBGW323

現代の腕時計の主流は自動巻です。腕に着けて生活していれば、自然とぜんまいが巻き上げられます。それでもグランドセイコーのラインナップには、手巻(ハンドワインディング)のモデルが確かな存在感を保ち続けています。その中核を担うのが、キャリバー9S64です。

9S64とは、グランドセイコーの手巻メカニカルキャリバーです。精度は平均日差+5秒〜-3秒、パワーリザーブは最大巻上時 約72時間(約3日間)。自動巻に必要なローターを持たないため、ケースを薄く仕上げられるのが最大の特徴です。

キャリバー9S64の基本スペック

キャリバーNo.9S64
駆動方式メカニカル 手巻
静的精度平均日差 +5秒〜-3秒
パワーリザーブ最大巻上時 約72時間(約3日間)持続
携帯精度日差 +10秒〜-1秒
石数24石
製造拠点グランドセイコースタジオ 雫石(岩手県)
搭載コレクションエレガンスコレクション/ヘリテージコレクション

静的精度は、工場出荷前にムーブメント単体の状態で、6姿勢差・3温度差の条件下で測定した数値です。実際にご使用になる環境下での精度(携帯精度)とは異なります。

数字だけを見れば、9S64は突出したスペックのキャリバーではありません。それでも通の方ほど手巻を選ぶのには理由があります。以下、スペックの意味するところと、搭載モデル、そして日常での付き合い方を順にご紹介します。

1. 手巻き時計は「生き物」である

自動巻きやクオーツ時計は、放っておいても動いてくれます。しかし、手巻き時計は違います。あなたが手をかけなければ、止まって死んでしまいます。

「手間がかかる子ほど可愛い」と言いますが、手巻き時計はまさにそれです。毎朝、決まった時間にリューズを巻き上げる。命を吹き込む。

この行為を通じて、時計との間に持ち主だけの「絆(ボンド)」が生まれます。

「今日もよろしく頼むな」──時計に触れるその一瞬が、自分自身のスイッチを入れる儀式になるのです。

2. キャリバー9S64。72時間の余裕

パワーリザーブ約72時間が意味すること

手巻の腕時計は毎日巻き上げるのが基本ですが、9S64のパワーリザーブは最大巻上時 約72時間(約3日間)あります。

金曜日の夜に外して、土日は着けずに過ごし、月曜日の朝にまだ動いている。手巻でこの余裕があるのは、実用上とても大きな意味を持ちます。「手巻は好きだが、巻くのを忘れて止めてしまうのが不安」という方でも、9S64なら気負わずにお使いいただけます。

ただし、パワーリザーブの終盤はぜんまいのトルクが落ち、精度が安定しにくくなります。精度を保ちたい場合は、残量が少なくなる前に巻き上げるのが基本です。毎朝ほぼ同じ時刻に巻き上げる習慣をつけておけば、ぜんまいのトルクが安定した状態を保てます。

精度 平均日差+5秒〜-3秒をどう捉えるか

9S64の静的精度は平均日差+5秒〜-3秒です。1日あたり最大でも5秒程度、1週間で30秒前後という水準になります。

この数値は、工場出荷前にムーブメント単体の状態で、6姿勢差・3温度差という条件下で測定されたものです。実際に腕に着けた状態での精度は携帯精度と呼ばれ、9S64搭載モデルでは日差+10秒〜-1秒が公表値となっています。着用時間や姿勢、温度、そしてぜんまいの巻き上げ状態によって変わるため、静的精度より幅を持たせた数値です。手首の動きが少ない日が続くと進み方が変わることもありますが、これは機械式時計の性質によるものです。

クオーツの年差±10秒やスプリングドライブの月差±15秒と比べれば、数値そのものは及びません。それでも機械式時計としては十分に高い水準であり、日常使いで時刻合わせに悩まされることはまずありません。

3. 指先に伝わる「カリカリ」という快感

手巻き時計の良し悪しは、「巻き心地」で決まります。ぜひ、店頭で9S64のリューズを回してみてください。

「カリ、カリ、カリ…」──指先に伝わる、コハゼが歯車を弾く感触。その感触は、重すぎず、軽すぎず、極めて滑らかです。

安価なムーブメントのような「ジャリジャリ」した不快な感触は一切ありません。まるで金庫のダイヤルを合わせているような、精密機械を操っている高揚感

この感触を味わうためだけに、無駄に巻きたくなるほどです。

4. ローターがないから実現できる「薄さと美しさ」

機能面での最大のメリットは、「薄さ」です。自動巻き時計には、裏側に半円形の重り(回転ローター)が付いています。これがムーブメントの厚みを増し、ケースを分厚くしてしまいます。

手巻きにはローターがありません。その分、時計を薄く、ドレッシーに作ることができます。9S64搭載モデル(SBGW301など)の厚さは、約11.7mm。シャツの袖口にスッと収まる、上品なサイズ感です。

裏蓋からの眺め

また、ローターがないため、シースルーバックからムーブメントの全貌を遮るものなく鑑賞できます。

美しく磨き上げられた受け、ルビーの赤、テンプの動き。工芸品としての美しさを堪能するなら、絶対に手巻きです。

5. 9S64の搭載モデル|現行の手巻ドレスウォッチ

9S64は、エレガンスコレクションとヘリテージコレクションの手巻モデルに搭載されています。いずれも精度・パワーリザーブは共通で、違いはケースサイズ、ダイヤル、デザインの系譜にあります。

型番コレクションケースサイズ厚さ重量価格(税込)特徴
SBGW267エレガンス37.3 × 44.3mm11.5mm61g550,000円9S64搭載モデルで最も手に取りやすい価格帯
SBGW279エレガンス37.3 × 44.3mm11.7mm61g638,000円「瑠璃(るり)」から着想を得た深い青のダイヤル
SBGW301エレガンス37.3 × 44.3mm11.7mm61g671,000円初代グランドセイコーを彷彿とさせるクラシカルなフォルム
SBGW291ヘリテージ36.5 × 42.7mm11.6mm66g726,000円「44GS現代デザイン」最小サイズ。アイボリーのダイヤル
SBGW297ヘリテージ36.5 × 42.7mm11.6mm132g770,000円ブレスレット仕様。ブルーグレーのダイヤル

全モデル共通:精度 平均日差+5秒〜-3秒/パワーリザーブ 最大巻上時 約72時間(約3日間)/手巻。スペック・価格はグランドセイコー公式仕様に基づきます。

大きく2系統に分かれます。エレガンスコレクション(SBGW267・279・301)は37.3mmで、初代グランドセイコーの流れを汲むクラシカルなドレスウォッチ。ヘリテージコレクション(SBGW291・297)は36.5mmと一回り小さく、1967年の「44GS」で確立されたデザイン文法を現代解釈した「44GS現代デザイン」です。

重量差にもご注目ください。革ベルト仕様は61〜66gと非常に軽く、ブレスレット仕様のSBGW297は132gとおよそ2倍になります。手巻の薄型ケースに革ベルトを合わせた60g台という軽さは、着けていることを忘れるほどの装着感です。

SBGW301
671,000円 (税込)
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SBGW291
726,000円 (税込)
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SBGW297
770,000円 (税込)
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6. 9S64の日常運用|巻き上げと止まったときの対処

巻き上げの目安

りゅうずを回していくと、いっぱいまで巻き上がった時点で手応えが変わります。それ以上は無理に回さず、そこで止めてください。手巻のぜんまいは巻き止まりがありますので、感触が変わったら巻き上げ完了の合図です。

巻き上げのタイミングは、毎朝ほぼ同じ時刻に決めておくのが最も安定します。ぜんまいのトルクが一定の範囲に保たれ、精度も落ち着きやすくなります。前述のとおりパワーリザーブは約72時間ありますので、1日巻き忘れても止まることはありませんが、精度を重視されるなら毎日の習慣にしていただくのが確実です。

止まってしまったときは

止まってしまった場合も、慌てる必要はありません。りゅうずを巻き上げれば動き出します。十分に巻き上げてから、時刻を合わせてください。巻き上げが不足した状態で時刻合わせをすると、すぐにまた止まってしまうことがあります。

日付表示について

9S64搭載モデルは、日付表示を持たないシンプルな三針構成です。カレンダー調整の手間がなく、止まったあとの復帰も時刻合わせだけで済みます。ダイヤルの面がすっきりと見えることも、ドレスウォッチとしての佇まいに寄与しています。

メンテナンスの目安

機械式時計は、定期的なオーバーホール(コンプリートサービス)によって性能を維持します。3〜5年に一度を目安にご検討ください。2026年6月時点のメカニカルモデルのコンプリートサービス料金は88,000円(税込)〜が参考料金です。実際の金額は時計の状態や交換部品によって変わりますので、正式な費用はお見積りをご確認ください。時計専門店ハラダでは、LINEでのご相談も承っております。

7. まとめ:不便益を楽しむという贅沢

便利さを追求すれば、スマートウォッチに行き着きます。時間は自動で合うし、メールも見れる。

しかし、私たちは機械(マシン)ではありません。心を持つ人間です。効率だけでは満たされない心の隙間を埋めてくれるのが、手巻き時計という「愛すべき非効率」なのです。

自分で巻かないと動かない。そんなか弱い相棒を、一生かけて守っていく。

キャリバー9S64は、そんな豊かな人生のパートナーにふさわしい名機です。

SBGW301
671,000円 (税込)
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店内写真1

ジュエリーも幅広く揃うのでカップルや家族での買い物も長時間楽しむことができる。

店内写真2

4階にはバーカウンターとイベントスペースが設置されている。

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落ち着いた雰囲気のバーカウンターで時計について語らうこともできる。

店内写真3

フロアごとに楽しみが見つけやすい建物の構造となっている。

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