「SLGC007は、SLGC001と何が違うのでしょうか」。そうお尋ねいただくことが増えました。どちらもキャリバー9SC5を積むテンタグラフです。価格もケースサイズも同じですから、迷われるのは自然なことです。
SLGC007は、厳冬期の岩手山の冠雪を、スノーブルーとブラックの二層ダイヤルで描いたメカニカルクロノグラフです。青白い新雪をスノーブルー、その下から覗く山肌をブラックで表しています。
この記事では、ダイヤルの見え方、キャリバー9SC5の構造、そしてSLGC001との選び分けを順に整理します。43.2mmという数値の印象と実際の装着感の違いにも触れ、グランドセイコーサロン認定店である当店の視点から、選ぶ手がかりをお伝えします。
SLGC007とは──厳冬の岩手山を映すスノーブルーの二層ダイヤル
SLGC007を理解する鍵は、文字盤が描く「場所」と「季節」にあります。ここでは、モチーフとなった山と、二層構造のダイヤルの成り立ちを見ていきます。名前や品番よりも、この情景を知るほうが選びやすくなります。
「グランドセイコースタジオ 雫石」から望む岩手山という原点
グランドセイコーのメカニカルウオッチは、岩手県のグランドセイコースタジオ 雫石で組み立てられています。その工房の窓から望めるのが岩手山です。SLGC007の文字盤は、この山の姿を出発点にしています。
岩手山は季節ごとに大きく表情を変える山です。SLGC007が題材としたのは、そのなかでも厳冬期の姿です。澄んだ青空に溶け込むように、うっすらと青が滲む新雪。その新雪を冠した山の情景が、文字盤に写し取られています。
グランドセイコーには、日本各地の自然を題材としたダイヤルが数多くあります。それぞれ題材となる土地も季節も異なります。SLGC007が映しているのは岩手山ですので、その点を押さえておくと理解が深まります。
新雪をスノーブルー、山肌をブラックで描く二層構造
SLGC007のダイヤルは、スノーブルーの面に、一段下げたブラックのインダイヤルを組み合わせた二層の構成です。青白い新雪をスノーブルー、その下から覗く山肌をブラックで表しています。
さらに表面には、岩手山の尾根から着想を得た型押しパターンが施されています。細かな稜線の連なりが、光を受けて陰影を生みます。平坦な塗り分けとは違い、雪面の質感が伝わってくる仕上がりです。
スノーブルーとブラックのコントラストこそが、SLGC007の中心にある魅力です。クロノグラフとして華やかすぎず、それでいて手元で確かに主張します。この配色の妙は、写真よりも実機のほうがはるかによく伝わります。

SLGC007 基本スペック
| コレクション | エボリューション9 コレクション(テンタグラフ) |
|---|---|
| キャリバー/駆動 | 9SC5/メカニカル 自動巻(手巻つき)/60石 |
| 精度 | 静的精度 平均日差+5秒〜−3秒/携帯精度 日差+8〜−1秒 |
| パワーリザーブ | 最大巻上時 約72時間(約3日間) |
| 外装 | ブライトチタン(一部セラミックス) |
| 裏ぶた | シースルースクリューバック(ブライトチタンとサファイアガラス) |
| ガラス | ボックス型サファイア(内面無反射コーティング) |
| ケースサイズ | 横43.2×縦51.5×厚15.3mm |
| バンド・中留 | バンド幅23mm/ワンプッシュ三つ折れ方式/腕周り最長195mm |
| 防水・耐磁 | 日常生活用強化防水(10気圧)/耐磁あり |
| 重量 | 154g |
| ルミブライト | あり(針・インデックス) |
| その他 | ねじロック式りゅうず/タキメーターつき/耐メタルアレルギー/ストップウオッチ機能(30分計・12時間計) |
| 発売 | 2025年5月 |
| 価格 | 1,980,000円(メーカー希望小売価格・税込) |

ダイヤルの見え方|光でどう表情が変わるか
SLGC007のダイヤルは、光の角度によって見え方が変わります。ここでは、型押しパターンの反射と、サブダイヤルとの対比についてお伝えします。カタログの一枚では伝わりにくい部分です。
尾根から着想を得た型押しパターンと光の反射
型押しパターンは、正面から見るときと斜めから見るときで印象が変わります。真上からの光では、スノーブルーが白に近く澄んで見えます。角度をつけると稜線に影が落ち、青みがぐっと深まります。
店頭では、実機を窓辺の自然光と店内照明の両方でご覧いただいています。「同じ時計とは思えない」とおっしゃるお客様も少なくありません。ダイヤルの表情がここまで動くモデルは、そう多くはありません。

ケースは、筋目を主体に鏡面を連ねた多面構成です。その鏡面を磨き上げてきたのが、グランドセイコーのザラツ研磨です。回転する錫(すず)の定盤に押し当てて磨く技法で、平面に歪みを出さないところに難しさがあります。光を受けたときに面が素直に映り込むのは、この研磨によるものです。
サブダイヤルとのコントラスト、そして視認性の設計
サブダイヤルは3つあります。9時位置がストップウオッチの30分計、6時位置が12時間計、そして3時位置が常時動いているスモールセコンドです。明るいスノーブルーの面に、ブラックのインダイヤルが3つ沈み込みます。この対比は、いわゆるパンダ調の配色として親しまれてきた見え方に近いものです。
コントラストがはっきりしているぶん、針の位置が読み取りやすくなっています。針とインデックスにはルミブライトが施され、暗所でも時刻を確認できます。日付表示は4時と5時の間に収められ、文字盤の対称性を崩していません。
ベゼルにはタキメーターが備わります。区間の所要時間から平均速度を割り出せる目盛りです。実用として使う機会は限られますが、クロノグラフらしい表情を引き締める役割を担っています。素材は耐傷性の高いセラミックスですので、この黒い面のつやは長く保たれます。

暗い場所では、針とインデックスに施されたルミブライトが緑に浮かびます。ストップウオッチの針まで光りますので、計測の途中でも読み取れます。

キャリバー9SC5「テンタグラフ」|10振動で約72時間
SLGC007の中身を支えるのが、キャリバー9SC5です。ここでは、その名称の意味と、高速振動と長い持続時間を両立させた構造を解説します。テンタグラフという呼び名の理由が見えてきます。
TENTAGRAPHという名前の意味
TENTAGRAPHは、四つの要素の頭文字を組み合わせた名称です。TEN beat(10振動)、Three days(3日間の持続)、Automatic(自動巻)、そしてChronoGRAPH。この四つが、そのまま9SC5の性格を表しています。
9SC5は2023年に、グランドセイコー初のメカニカルクロノグラフとして誕生しました。SLGC007は、その系譜に連なる一本です。
垂直クラッチ方式とピラーホイール方式
クロノグラフの操作感を決めるのが、スタートとストップの制御方式です。9SC5はピラーホイール(コラムホイール)方式を採用しています。押す指の力が動作に影響しにくく、クラッチやレバー類に無駄なトルクがかかりません。
計測の伝達には垂直クラッチ方式が用いられています。水平クラッチ方式では、計測開始時にストップウオッチ針がわずかに飛ぶことがあります。垂直クラッチ方式は、この針飛びを抑える構造です。
帰零には三叉ハンマーという一体パーツが使われます。ストップウオッチの秒・分・時の3針を、同時かつ瞬時にゼロへ戻す仕組みです。プッシュボタンを押したときの気持ちよさは、こうした設計に支えられています。
デュアルインパルス脱進機とツインバレルが生む持続時間
毎時36,000振動、つまり1秒あたり10振動という高速のテンプは、なめらかな運針をもたらします。その一方で、振動数が上がるほどぜんまいの消費は増えます。ここで働くのがデュアルインパルス脱進機です。
デュアルインパルス脱進機は、がんぎ車から直接てんぷに力を伝える「直接衝撃」と、伝統的な「間接衝撃」を組み合わせた構造です。MEMS技術によるパーツを用い、脱進機の効率を高めています。これにツインバレルが加わることで、消費と蓄積の均衡が取れます。
10振動でありながら、最大巻上時で約72時間という持続時間を実現しています。金曜の夜に外しても、月曜の朝に動いている計算です。精度は静的精度で平均日差+5秒〜−3秒、携帯精度で日差+8〜−1秒と定められています。
石数は60石。てんぷには、グランドセイコーが独自に開発した巻上ひげが用いられています。姿勢による精度差が出にくい形状で、ハイビートの安定を足元から支えています。りゅうずを引けば秒針が止まりますので、時刻を秒単位で合わせることもできます。
そしてこの機械は、シースルースクリューバックから覗くことができます。裏ぶたはブライトチタンとサファイアガラスの組み合わせで、ねじ込み式です。裏返せば、10振動で振れるてんぷと、丁寧に磨かれた地板が見えます。クロノグラフは部品点数が多いぶん、眺めていて飽きません。

グランドセイコーには、スプリングドライブによるクロノグラフも存在します。二つの系統の違いについては、クロノグラフの選び方ガイドで全体像を整理しています。
SLGC001との選び方|同じ岩手山、異なる情景
SLGC007を検討される方が、必ずと言っていいほど比較されるのがSLGC001です。ここでは、両者が描く情景の違いと、スペック面の共通点を並べて整理します。選択の軸がはっきりします。
雪月夜の星空(SLGC001)と厳冬期の冠雪(SLGC007)
SLGC001の文字盤は、透明感のあるブルーです。「グランドセイコースタジオ 雫石」から望む岩手山の、雪月夜の情景を題材にしています。山肌から着想を得た繊細なパターンと組み合わせ、岩手山の天頂に広がる星空を表現しています。
一方のSLGC007は、同じ山の厳冬期の冠雪を描いています。夜空を見上げるのがSLGC001、昼の山肌を見つめるのがSLGC007。そう言い換えると、違いがつかみやすいかもしれません。
つまり、両者は「別の時計」というより「同じ山の別の時間帯」です。どちらが優れているという関係ではありません。SLGC001の詳細はSLGC001のご紹介記事でも取り上げています。
なお、SLGC001は2023年に登場した、グランドセイコー初のメカニカルクロノグラフです。テンタグラフという系譜の出発点にあたります。SLGC007は2025年5月に加わった一本で、同じ岩手山を別の季節から捉え直しています。
スペックはほぼ共通、選択は「情景」で決まる
| 比較軸 | SLGC007 | SLGC001 |
|---|---|---|
| ダイヤル・情景 | スノーブルー×ブラックの二層/厳冬期の冠雪 | 透明感のあるブルー/雪月夜の星空 |
| 型打ちモチーフ | 岩手山の尾根 | 岩手山の山肌 |
| ケース素材 | ブライトチタン(一部セラミックス) | ブライトチタン(一部セラミックス) |
| ケースサイズ | 横43.2×縦51.5×厚15.3mm | 横43.2×縦51.5×厚15.3mm |
| 重量 | 154g | 154g |
| 腕周り(最長) | 195mm | 200mm |
| キャリバー | 9SC5 | 9SC5 |
| 価格 | 1,980,000円(税込) | 1,980,000円(税込) |
| 発売 | 2025年5月 | 2023年 |
表のとおり、素材もサイズも重量も価格も共通です。差が出るのは腕周りの最長寸法と、発売時期、そして文字盤の情景だけです。だからこそ、選択は性能ではなく「どちらの情景が好きか」で決まります。
腕周りの最長寸法は、SLGC007が195mm、SLGC001が200mmです。日本国内の一般的な手首であれば、どちらも調整の範囲に収まります。腕周りが太めの方だけ、事前にご確認いただくと安心です。
当店でも「スペックで決められない」というご相談をよくいただきます。そうした場合は、2本を並べて光にかざしていただくようにしています。数分ご覧いただくと、多くの方が自然にどちらかへ手を伸ばされます。実機はSLGC001の商品ページでもご確認いただけます。
ブライトチタンとセラミックスの装着感|43.2mm・154g
43.2mmという数字に構えてしまう方は少なくありません。ここでは、素材の軽さと設計の工夫が、その印象をどう変えるのかをお伝えします。数値と実感のずれが、このモデルの面白いところです。
ステンレススチール比 約30%軽量というブライトチタン
SLGC007の外装にはブライトチタンが用いられ、一部にセラミックスが組み合わされています。ブライトチタンは、セイコーグループが開発したチタン合金です。グランドセイコー専用の素材ではなく、グループ内の複数のブランドで採用されています。
特徴は二つあります。ひとつはステンレススチール比で約30%軽いという軽量性です。もうひとつは、優れた耐傷性と耐食性です。チタン特有のくすみを抑え、純チタンより白く明るい光沢を持つ点も外装として大きな利点です。
素材そのものの詳細は、ブライトチタンの解説記事でも掘り下げています。あわせてご覧いただくと、手に取ったときの納得感が変わります。
低重心設計と幅広ブレスレットがもたらす収まり
厚さ15.3mm、重量154gという数値は、決して小さくありません。ただ、エボリューション9スタイルはケースの重心位置を下げることを設計の柱のひとつに掲げています。重心が低く保たれるぶん、腕の上に乗っている感覚が出にくくなります。
ブレスレットは幅23mmと広めで、ワンプッシュ三つ折れ方式の中留が備わります。幅があるぶん荷重が分散し、一点に食い込む感じが和らぎます。腕周りは最長195mmまで調整できますので、多くの方に対応できます。

「大きすぎるのでは」と身構えてご来店されたお客様が、着けた瞬間に表情を変えられることがあります。「思ったより手首に収まる」というご感想を、これまで何度もいただいてきました。とはいえ装着感には個人差がありますので、試着でお確かめいただくのが確実です。


どんな方に向くか|価格と維持費の考え方
最後に、SLGC007がどんな方に向くのかを整理します。あわせて、購入後に関わってくる保証やメンテナンスの考え方にも触れます。長く付き合う一本としての視点です。
クロノグラフを日常に使いたい方/白系ダイヤルを探している方
クロノグラフは華やかな配色のモデルが多いなかで、SLGC007は落ち着いたまとまりを見せます。スノーブルーとブラックという構成は、いわゆるモノトーン調に近い印象です。スーツの袖口にも収まりやすく、ビジネスシーンでも合わせやすい一本です。
白系や明るい色の文字盤を探している方にも向きます。純白ではなく、青みを含んだ雪の色ですので、単調になりません。光の加減で表情が動くぶん、飽きが来にくいという声もいただきます。
SLGC007は、グランドセイコーブティックとグランドセイコーサロンでのお取り扱いです。時計専門店ハラダはグランドセイコーサロン認定店ですので、徳島の店頭で実機をご覧いただけます。在庫状況やお取り寄せのご相談は、SLGC007の商品ページまたはLINEから承っております。
ご来店が難しい方には、実機の動画をLINEでご確認いただく方法もご案内しています。このダイヤルは光の角度で表情が大きく変わりますので、静止画より動画のほうが伝わります。
価格・5年保証・コンプリートサービスという長期の視点
価格は1,980,000円(メーカー希望小売価格・税込)です。グランドセイコーの正規保証は、2021年10月1日以降に販売された商品についてお買い上げ日から5年間と定められています。
長く使う前提でお伝えしておきたいのが、分解掃除の費用です。セイコータイムラボの料金表では、グランドセイコーのコンプリートサービスはメカニカルで88,000円〜(目安・税込)とされています。オーバーホールと内装修理に、ケースとバンドのつやを整えるライトポリッシュを加えたサービスで、お預かりの期間はおよそ3〜6週間が目安です。
実施の間隔は3〜4年に一度が推奨されています。保証期間内であっても、定期的なオーバーホールは有料です。クロノグラフは部品点数が多いぶん、この点検の価値が大きいカテゴリーだと考えています。料金は改定される場合がありますので、正確なお見積りはLINEまたは店頭でお申し付けください。
よくある質問
SLGC007について、よくいただくご質問をまとめました。
Q1. SLGC007とSLGC001は何が違いますか?
Q2. 精度はどれくらいですか?
Q3. どこで購入できますか?
Q4. 43.2mm・厚さ15.3mmは大きすぎませんか?
Q5. 保証やメンテナンスの費用はどうなりますか?
まとめ
SLGC007は、厳冬期の岩手山の冠雪を、スノーブルーとブラックの二層ダイヤルで描いたメカニカルクロノグラフです。キャリバー9SC5は毎時36,000振動でありながら、最大巻上時で約72時間の持続を備えます。ブライトチタンの軽さと低重心設計により、数値ほどの大きさは感じにくい仕上がりです。
SLGC001とはスペックも価格も共通ですので、選び分けの軸は情景の好みに置かれます。雪月夜の星空か、厳冬期の冠雪か。並べて見比べていただくと、ご自身の答えが見えてきます。
グランドセイコーサロン認定店である当店(徳島)では、実機と動画の両方でご確認いただけます。詳しい仕様はSLGC007の商品ページをご覧ください。ご来店のご予約やLINEでのご相談も、お気軽にお申し付けください。
気になる一本がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。徳島のグランドセイコーサロン認定店として、ご相談を承っております。
※掲載内容は2026年8月時点のものです。価格は変更となる場合がございます。最新の情報は当店までお問い合わせください。
ハラダ GS担当 藤本
グランドセイコーの在庫・価格の一覧は本店サイトでご確認いただけます:グランドセイコー在庫一覧(正規販売店HARADA本店)