阿寺渓谷のスプリングドライブが新世代へ ── 新作 SLGB011
グランドセイコーの「阿寺渓谷(阿寺ブルー)」が、2026年に新世代へと刷新されます。ハラダでGrand Seikoを担当しております、藤本と申します。阿寺渓谷をモチーフにしたダイヤルはこれまでスプリングドライブで表現されてきましたが、その心臓部が、年差±20秒の「スプリングドライブ U.F.A.(キャリバー9RB2)」へと載せ替えられました。この新型が、本稿で扱う SLGB011 です。

先代にあたるのは、阿寺渓谷の青をスプリングドライブ9RA2(月差±10秒)で表現した SLGA025 です。SLGB011 は、阿寺渓谷のブルーグリーン(ティール)というダイヤルの系譜を受け継ぎながら、ムーブメントの精度域を月差から年差へと一段引き上げ、ケース素材もブライトチタンからエバーブリリアントスチールへと改めた一本です。
ブルーグリーンのダイヤルは、グランドセイコーが得意とする多層的な発色によるもので、光の当たり方で青に振れたり緑へ傾いたりと、角度によって表情を変えます。単純な塗装では出せない奥行きを備えた、阿寺渓谷の透明な水を思わせる青緑です。
本稿では、新作 SLGB011 が先代 SLGA025 から何を変え、何を受け継いだのかを、ムーブメント・素材・寸法という具体的な観点からひとつずつ深掘りしていきます。

元モデルとしての SLGA025 ── 阿寺ブルーの起点
まず系譜を整理しておきます。SLGA025は阿寺渓谷のモチーフをスプリングドライブで表現した一本で、ここが現在に続く「阿寺ブルー」の起点にあたりました。新作SLGB011がどこから来たのかを知るうえで、この元モデルの設計を押さえておくことが手がかりになります。

私がSLGA025を初めて手にしたときに驚いたのは、その軽さでした。ケースとブレスレットにブライトチタンを採用しているため、数字以上に腕への負担が小さく、長く着けていても負担を感じにくい掛け心地です。阿寺渓谷の翡翠色とチタンの落ち着いたマットな質感は、よく合う組み合わせだと感じました。
ムーブメントはスプリングドライブ 9RA2で、月差±10秒の精度とパワーリザーブ約120時間を備えます。週末に外して月曜に着けても止まらない安心感は、9RA2世代の大きな美点でしょう。径40.0mm・厚11.8mmという寸法は、Evolution 9スタイルの均整のとれた佇まいをよく表しています。
阿寺渓谷の青を、まずチタンの軽さとともに腕にもたらした一本です。SLGB011を語るうえで、この出発点を外すことはできません。
新作 SLGB011 の概要 ── 阿寺ブルーを U.F.A. で受け継ぐ
新作 SLGB011 は、阿寺渓谷の阿寺ブルーをそのまま受け継ぎつつ、心臓部にスプリングドライブ U.F.A.(キャリバー9RB2)を据えた一本です。年差±20秒という、これまでのスプリングドライブとは桁の違う精度域に踏み込んだモデルで、2026年9月5日の発売が予定されています。
未発売のため、ここでは先行・展示個体を拝見した範囲でお伝えします。手に取って最初に感じたのは、ダイヤルの青緑はSLGA025の延長線上にありながら、ケース素材の変更によって全体の印象が少し引き締まったことでした。所有して常用したわけではないので断定は避けますが、展示の照明下での見え方は確かに従来と質感が異なりました。
スペックを整理すると、ムーブメントはスプリングドライブ U.F.A. 9RB2、年差±20秒、パワーリザーブ約72時間。ケースとブレスレットはエバーブリリアントスチール。径40.0mm・厚11.7mm。シースルーバックを備え、Evolution 9のデザイン文法を踏襲します。
阿寺渓谷の青はそのままに、精度という一点を大きく引き上げた一本。それがSLGB011の輪郭だと言えるでしょう。

進化点① ── ムーブメント 9RA2 → 9RB2 U.F.A.(月差±10秒 → 年差±20秒)
最大の変更点は精度です。SLGA025の9RA2が月差±10秒であったのに対し、SLGB011の9RB2 U.F.A.は年差±20秒。月単位の管理から年単位の管理へと、精度の基準そのものが切り替わりました。
私がスプリングドライブという機構に惹かれてきた理由は、機械式の連続的な針の流れと、クオーツに迫る精度を一台に同居させているところでした。U.F.A.はその同居をさらに先へ進めた世代です。展示個体の秒針が音もなく流れる様子を拝見していますと、これが年差で語られる時計だという事実が、しばらく実感として追いつきませんでした。
U.F.A.は「Ultra Fine Accuracy」を指し、スプリングドライブの調速機構を高い次元で安定させることで、年差±20秒という領域に到達しています。日々の時刻合わせの手間が事実上ほとんど不要になる精度域で、実用の道具としての信頼性は一段上がったと言えます。
この静かな針の流れが一年を通してほとんど狂わないというのは、あらためて考えてみますと大変なことです。お客様が日々時刻を気にせずお使いいただける、その安心感こそがU.F.A.の価値だと思います。

進化点② ── 素材 ブライトチタン → エバーブリリアントスチール、そして正直なトレードオフ
素材の方向性も変わりました。SLGA025のブライトチタンに対し、SLGB011はエバーブリリアントスチールを採用しています。これは優劣ではなく、性格の違いとして受け止めていただきたい点です。
実機を見比べた印象では、チタンが軽さとマットで温かみのある質感を持つのに対し、エバーブリリアントスチールは少し重みがある代わりに、落ち着いた深い光沢と高い耐食性を備えていました。エバーブリリアントスチールは海水などにも強い耐食性を持つ素材で、阿寺渓谷の水のモチーフとは相性のよい選択だと感じます。厚さも11.8mmから11.7mmへ0.1mmながら薄くなり、装着感の方向が整理されています。
ここで正直にお伝えしておきたいトレードオフがあります。パワーリザーブは、SLGA025の約120時間からSLGB011では約72時間へと短くなりました。週末に外して月曜にそのまま着けられた9RA2世代の余裕は、72時間では金曜の夜に外すと月曜には止まっている計算になります。常用するなら、9RB2は基本的に毎日着ける、あるいは週明けに巻き上げ直す前提の一本だとご理解ください。精度の領域を引き上げた代わりの設計上の選択であり、ここを隠して薦めることはしたくありません。
この時計の長所と短所は、元モデルSLGA025が軽さと長いリザーブを軸にしていたのに対し、新作SLGB011は精度と耐食の光沢を取りにいった一本だ、というのが正直なところです。手首約18cmの私の腕では、エバーブリリアントスチールの適度な重みも、むしろ安定として好ましく感じられました。お客様の腕まわりやお使い方によって、ちょうどよい一本は変わってくるのではないでしょうか。

変わらない核 ── 阿寺ブルー、40mm、Evolution 9
ここまで変更点を挙げてきましたが、SLGB011とSLGA025が共有する核は揺らいでいません。阿寺渓谷の阿寺ブルー、径40.0mmの佇まい、そしてEvolution 9のデザイン文法。この三つは新旧で一貫しています。
私がこの二本を並べて感じたのは、グランドセイコーが「変えるべきもの」と「守るべきもの」を明確に分けているということでした。精度と素材は前へ進める。一方で、阿寺渓谷という土地の記憶と、40mmという普遍的なサイズ感は動かさない。だからこそ、世代が替わっても同じ系譜の一本だと感じられるのでしょう。
技術的にも、Evolution 9はケースの厚みを抑えつつ視認性と装着感を高める設計思想で、SLGB011でもダイヤルのインデックスや針のエッジの立ち方にその意図が見て取れました。文字盤の阿寺ブルーは、新旧どちらも光の中で表情を変える多層的な発色で、ここが両モデルに共通する核となっています。
色という核は守りながら、ムーブメントと素材という器を一段ずつ磨き上げていく――そうしたグランドセイコーの仕事ぶりが、この二本を並べるとよく分かります。お客様にも、この一貫した姿勢を感じ取っていただけるのではないでしょうか。
どちらの阿寺ブルーを選ぶか ── 正規販売店ハラダから
選び方を整理します。新作 SLGB011 は、エバーブリリアントスチール×年差±20秒という性格の一本です。日々の時刻合わせをほぼ気にせず使いたい方、海辺など水まわりでの耐食性や落ち着いた光沢を重視する方には、まさにこの一本が向きます。元モデル SLGA025 がブライトチタンの軽さと約120時間のパワーリザーブを軸にしていたのに対し、SLGB011は精度と耐食の光沢へと軸足を移しました。同じ阿寺ブルーを受け継ぎながら、新作は実用の信頼性という方向で性格をはっきりさせています。
私自身の感想を添えるなら、阿寺ブルーという色に惹かれて一本を選ばれるのでしたら、これから長く付き合える精度を備えたSLGB011を主役にお薦めしたいと考えています。展示個体を拝見、撮影した範囲ではありますが、年差で時を刻むこの一本が腕にもたらす安心感は、これまでとは確かに違うものでした。

ハラダはグランドセイコーの正規販売店です。SLGB011は2026年9月5日の発売予定で、ご予約・ご相談を承っております。お支払いは無金利分割を最長100回までご用意しており、無理のないご計画でお迎えいただけます。アフターについては、3年間の対物保険が付帯し、万一の落下や衝突といった事故にも備えられます。安心して長くお使いいただける体制を整えてお待ちしています。
阿寺渓谷の青を年差±20秒で受け継いだこの新作を、ぜひ一度ご自身の腕の上でご覧ください。ご来店、またはお問い合わせ・LINEでのご相談を、藤本がお待ちしております。
ハラダ GS担当 藤本