グランドセイコーのスポーツコレクションには、24時間表示の回転ベゼルが二色に分かれた機械式GMTが2本あります。SBGJ237とSBGJ277です。
どちらもキャリバー9S86、いわゆるメカニカルハイビート36000 GMTを搭載しています。SBGJ237が2020年7月、SBGJ277が2024年5月の発売で、4年ほどの開きがありますが、新旧の関係ではありません。同じ器に違う色を載せた、並び立つ2本です。
この記事では、その「違う色」が何を意味するのか――ベゼルが二色である理由、夜になったときの見え方、44.2mmという数字の実際、そしてどちらを選ぶかまでを、当店で撮影した実機写真を交えてお話しします。ハラダ GS担当の藤本です。どうぞお付き合いくださいませ。
先に結論|中身は完全に同じで、違うのは色だけです
2本を並べて比べるとき、まず知っておいていただきたいことがあります。SBGJ237とSBGJ277は、ケースもムーブメントも精度も防水性能も価格も、すべて同一です。迷う理由になるのは、ダイヤルとベゼルの色、それだけなのです。
| SBGJ237 | SBGJ277 | |
|---|---|---|
| ダイヤル | ミッドナイトブルー | 純白(雪渓の型打ちパターン) |
| ベゼル | 青と白のサファイアガラス | グリーンと白のサファイアガラス |
| GMT針 | シルバー | グリーン |
| 発売 | 2020年7月 | 2024年5月 |
| キャリバー | 9S86(メカニカルハイビート36000 GMT/自動巻・手巻つき) | |
| 精度 | 静的精度 平均日差+5秒〜-3秒/携帯精度 日差+8秒〜-1秒 | |
| 駆動期間 | 最大巻上時 約55時間持続 | |
| ケース | ステンレススチール/横44.2mm×縦50.6mm×厚さ14.4mm/188g | |
| ガラス・裏ぶた | デュアルカーブサファイア(内面無反射コーティング)/スクリューバック | |
| 防水・耐磁 | 日常生活用強化防水(20気圧)/耐磁あり | |
| ルミブライト | 針・インデックス・ベゼル | |
| その他 | 回転ベゼル(24時間表示)/ねじロック式りゅうず/37石/24時針(デュアルタイム表示機能)/カレンダー連動時差修正機能 | |
| 価格(税込) | 990,000円 | 990,000円 |
スペック表で優劣がつかない以上、選ぶ基準は「どちらの色と長く付き合いたいか」に絞られます。ここから先は、その判断材料をひとつずつ並べていきます。
ツートンベゼルは飾りではない――24時間表示が昼と夜を分けている
店頭でこの2本をご覧になったお客様から、いちばん多くいただく質問がこれです。「なぜベゼルが二色なのですか」。
答えは、色の切り替わる位置にあります。ベゼルの数字をよく見ると、6から18までの半分が白、18から翌6までの半分が濃い色(SBGJ237なら青、SBGJ277ならグリーン)で塗り分けられています。明るい側が昼、暗い側が夜。二色は装飾ではなく、時刻を読むための仕掛けなのです。


24時間表示のGMT針が指す先が白い側なら、その土地は昼。濃い側なら夜。時差を数字で計算しなくても、色の面積が「向こうは今どんな時間帯か」を教えてくれます。国際電話をかける前や、海外のご家族に連絡を取る前に、ちらりと手元を見るだけで判断できるわけです。
そしてこのベゼルは回転します。グランドセイコーの公式解説にもあるとおり、回転ベゼルを併用すると、同時に三つの異なるタイムゾーンを表示できます。時分針で現在地、GMT針でホームタイム、ベゼルをずらして三つ目――出張が多い方や、時差のある拠点と仕事をされている方にとっては、実務的な機能です。
夜になると、白い側だけが「面」で光る
この2本のルミブライト(蓄光)は、針とインデックスだけでなくベゼルにも施されています。暗所での見え方が面白いので、実機を撮影しました。


写真のとおり、白い側は面そのものが緑に光り、数字は影として黒く残ります。色のついた側はその逆で、数字だけが光る。昼夜の塗り分けが、暗闇でも反転したまま保たれる設計です。暗所での写真を見返すたび、ベゼルを二色にした本当の理由はここにあるのではないかと思うのです。
SBGJ237|ミッドナイトブルーと青白ベゼル(2020年)
2020年7月に登場したSBGJ237は、この二色ベゼルという表現をスポーツコレクションに定着させた一本です。ダイヤルはミッドナイトブルー。名前のとおり、真夜中の空に近い、黒に沈む手前の青です。

写真で伝わりにくいのは、この色が光の角度で大きく表情を変えることです。正面から光が入れば澄んだ青、傾ければ外周から順に黒へ落ちていく。屋外の明るさでは青、室内では紺、夜はほとんど黒。一本で三つくらいの顔を持っています。
ベゼルの白い側に振られた数字はブルー、青い側の数字は白。ここが反転していることで、遠目にも境目がはっきりします。グランドセイコーはこの配色を、公式に「ヴィンテージウオッチのように長く愛されるデザイン」と説明しています。発売から6年が経ってなお、当店でも指名でお問い合わせをいただく一本であることを思うと、この説明は誇張ではなかったのだと感じます。
GMT針はシルバーで、ダイヤルの青に対して主張しすぎません。時計としてまとまりを優先したい方、スーツの袖口から覗いても浮かない一本をお探しの方には、こちらが向いています。
SBGJ277|純白の雪渓と緑白ベゼル(2024年)
2024年5月に加わったSBGJ277は、日本の夏の風景から生まれたモデルです。
夏になっても高山の渓谷に残る雪を「雪渓(せっけい)」と呼びます。グランドセイコーはこの情景を、回転ベゼルのグリーンと、繊細な型打ちで表現された純白のダイヤルパターンに置き換えました。緑の山肌に白く残る雪――ベゼルと文字盤の関係が、そのまま夏山の光景になっているわけです。


純白のダイヤルは、平らな白ではありません。細かな結晶が折り重なったような型打ちが全面に入っており、光を当てると無数の粒が立ち上がります。白でありながら、のっぺりしない。この密度が、いわゆる白文字盤の時計とは決定的に違うところです。
もうひとつの見どころがグリーンのGMT針です。白い盤面の上で、シルバーの時分針と混ざらずに一本だけ緑が走る。GMT針は「今どこの時間を指しているか」を瞬時に読ませる必要がありますから、この色分けは理にかなっています。文字盤の「GMT」の表記まで緑で揃えてあるところに、細部への律義さを感じます。
明るい時計を一本持っておきたい方、夏場に手元が重く見えるのを避けたい方には、SBGJ277をおすすめしています。白と緑の組み合わせは、日焼けした肌にも、白いシャツにもよく合います。
2本に共通する中身|キャリバー9S86 ハイビート36000 GMT
色の話が続きましたので、ここで中身に触れておきます。両モデルが搭載するキャリバー9S86は、グランドセイコーの機械式のなかでも上位に位置するムーブメントです。

ハイビート36000とは、テンプが毎時36,000回、毎秒10回振動することを指します。振動が細かいほど姿勢差や外部からの衝撃の影響を受けにくく、精度が安定します。秒針の動きも滑らかで、静かな場所では小刻みな音が聞こえてきます。
精度は静的精度が平均日差+5秒〜-3秒、実際に腕に着けた状態を想定した携帯精度が日差+8秒〜-1秒。駆動期間は最大巻上時で約55時間です。金曜の夜に外して週末を過ごされる場合、月曜の朝には止まっていることがありますので、日曜の夜に一度巻いていただくと安心です。
GMTとしての作法も丁寧です。グランドセイコーの公式解説によれば、9S86はリュウズを一段引くと、秒針を止めずに時針だけを単独で動かせます。時刻合わせのたびに秒針を止めていては、せっかくのハイビートの精度が削られてしまう――その理屈で作られた仕組みです。移動先の空港で時計を現地時間に合わせても、秒までの精度はそのまま保たれます。
加えてカレンダー連動時差修正機能を備えています。時針を送ると日付も一緒に切り替わり、日付をまたいで時針を戻せばカレンダーも前日へ戻ります。渡航先で時刻を合わせ直したあとに、日付だけがずれたまま残るという煩わしさがありません。GMTを実際に使う方にとっては、この一点があるかないかで扱いやすさが変わります。石数は37石です。
その機械を収めているのが、ねじ込み式のスクリューバックです。裏ぶたの中央には、グランドセイコーの象徴である獅子のメダリオンが据えられています。腕に着けている間は見えない場所ですが、外して裏返したときに現れるこの意匠を楽しみにされているお客様は少なくありません。

グランドセイコーのGMTには、この9S86のほかにスプリングドライブ系と9S64系の系統があります。系統ごとの違いについてはグランドセイコーGMT全29モデル比較で整理していますので、あわせてご覧ください。
44.2mmという数字の実際|厚さ14.4mm・188g・バンド幅21mm
お問い合わせで最も多いのが、サイズについてのご不安です。「44.2mmは大きすぎませんか」と。
数字を正確にお伝えします。ケースは横44.2mm、縦50.6mm、厚さ14.4mm、重量188g。バンド幅は21mm、中留はワンプッシュ三つ折れ方式で、ブレスレットは腕周り最長201mmまで対応します。


ここで注目していただきたいのが、横44.2mmに対して縦が50.6mmに収まっている点です。ラグが短く、しかも下方向へ絞り込まれています。腕に載せたときに手首からはみ出しにくいのは、この寸法設計によるところが大きいのです。
もうひとつ、数字だけでは決して分からないことがあります。同じ44.2mmでも、腕の太さによって見え方が大きく変わるということです。当店で同じ一本を、腕周り約16cmと約18cmの腕に載せ、時計が同じ大きさに写るよう倍率を揃えて撮影しました。


左が腕周り約16cm、右が約18cm。差はわずか2cmです。それでも、16cmのほうではラグの先端が手首の輪郭と重なり、時計が腕いっぱいに広がって見えます。18cmのほうでは、同じケースが左右に余白を残して収まる。ケースの直径は1mmも違わないのに、印象はここまで動くのです。
44.2mmが大きいかどうかは、数字ではなく腕との関係で決まります。ご自身の腕周りが分かっていれば、この2枚のどちら寄りに写るかは見当がつけられるはずです。カタログの数字だけで迷われている方には、この2枚をお見せするのがいちばん早いように思います。
とはいえ、188gという重量は軽くはありません。正直に申し上げれば、チタンのモデルから履き替えると、最初の数日は確実に重さを感じます。ただ、この重さはステンレススチールという素材と、20気圧防水を成立させるケース構造の裏返しでもあります。しばらく着けていると、手首に落ち着く重心として馴染んでくる――そういう性質の重さです。
こればかりは、実際に腕に載せていただくのがいちばん確実です。当店では両モデルとも実機をご確認いただけます。
夏に強く、一年を通して使える理由
この2本が季節を問わず選ばれ続けている理由を、実用の面から整理しておきます。
まず日常生活用強化防水(20気圧)です。りゅうずはねじロック式で、裏ぶたはねじ込み式のスクリューバック。ケースを閉じる二か所が、この防水性能を支えています。汗をかく季節に、手を洗うたび、雨に降られるたびに気を遣わなくてよいというのは、思っている以上に大きな安心につながります。加えてステンレススチールのブレスレットですから、汗をかいた日は水で流していただけます。革ベルトのように季節で交代させる必要がありません。
次に色です。SBGJ277の純白と緑は、暑い時期の手元を軽く見せてくれます。半袖から出る腕に白い時計が載っていると、それだけで涼やかに映るのです。一方のSBGJ237のミッドナイトブルーは、夏の夜や、日が落ちてからの時間によく似合います。同じ二色ベゼルでありながら、夏のどの時間帯に寄り添うかが違う――そう捉えていただくと分かりやすいかもしれません。

そして秋冬になっても、この2本は手元から外れません。ミッドナイトブルーは厚手のニットやコートの袖口に沈み、純白の雪渓は本来の季節――雪の風景に戻ります。夏に買って夏だけの時計になるのではなく、季節が一巡すると意味の変わる時計なのです。一年を通してご指名をいただく背景には、こうした懐の深さがあるのだろうと感じています。
海外へ出られる機会が多い方には、GMTという機能そのものも効いてきます。使い方の具体例は海外旅行におすすめのグランドセイコーGMTでご紹介しています。
どちらを選ぶか|色で決めるための3つの視点
スペックで差がつかない以上、決め手は色です。店頭でご相談を受けるとき、私が必ずお尋ねしている3点をそのまま並べます。
視点1|今お持ちの時計と、どちらが重ならないか
すでに濃色の文字盤を何本かお持ちであれば、SBGJ277の純白は引き出しの中で明確に役割が分かれます。逆に白やシルバーの時計が多い方には、SBGJ237のミッドナイトブルーが新しい選択肢になります。一本目より二本目のほうが、この基準は効きます。
視点2|手元を明るく見せたいか、締めたいか
純白のダイヤルは手元を軽く、明るく見せます。ミッドナイトブルーは逆に、袖口を引き締めます。お仕事で人前に立つ機会が多い方、フォーマル寄りの装いが中心の方はSBGJ237を選ばれることが多く、休日の装いを楽しまれる方や、明るい色の服が多い方はSBGJ277を手に取られる傾向があります。
視点3|その色に、物語を求めるか
SBGJ277には「雪渓」という明確な情景があります。夏山に残る雪を持ち歩いているという感覚は、日本の自然を映すグランドセイコーらしい愉しみ方です。SBGJ237は特定の風景に紐づいていない代わりに、配色そのものが長く支持されてきた実績を持ちます。由来を語れる一本が好きか、語らずに済む一本が好きか。ここは好みが分かれるところで、どちらが優れているという話ではありません。
ちなみに店頭では、この2本を並べてお見せすることをおすすめしています。写真では白と青の対比が強く出ますが、実物を隣に置くと、想像より近い兄弟であることが分かります。そのうえで手が伸びたほうが、おそらく正解です。
よくある質問 (FAQ)
Q1. SBGJ237とSBGJ277で、性能に違いはありますか?
Q2. 44.2mmは大きすぎませんか?
Q3. GMT針の時刻合わせは難しいですか?
Q4. 夏に汗をかいても問題ありませんか?
まとめ|同じ器に、違う季節を載せた2本
冒頭で、この2本の違いは色だけだと申し上げました。書き終えてみると、その「だけ」がずいぶん大きいことが分かります。
ベゼルの二色は昼と夜を分け、暗闇では光り方まで反転します。ミッドナイトブルーは光の角度で表情を変え、純白の雪渓は夏山の情景をそのまま手元に置きます。中身は同じ9S86、同じ55時間、同じ20気圧――だからこそ、色の違いがそのまま持ち主の選択になるのです。
どちらも当店で実機をご確認いただけます。写真ではどうしても伝わらないのが、ミッドナイトブルーの沈み方と、雪渓パターンの粒立ちです。ご来店が難しい場合は、実物の動画を撮影してお送りすることもできますので、お気軽にお申し付けくださいませ。
気になる一本がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。徳島のグランドセイコーサロン認定店として、ご相談を承っております。
※掲載内容は2026年8月時点のものです。価格は変更となる場合がございます。最新の情報は当店までお問い合わせください。
ハラダ GS担当 藤本
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